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第3話 北の国境

last update 최신 업데이트: 2025-05-06 21:47:38

「よく来たね。あたしはメイド長。上から話は聞いているよ。あんたは貴族令嬢だったらしいが、ここじゃ身分は関係ない。掃除、洗濯、料理、その他の仕事すべて。できないなんて言わせないよ。こき使ってやるから、そのつもりで」

「はい、もちろんです」

 にっこり笑って返事をすると、メイド長はちょっと鼻白んだ。

 前世は一人暮らしで家事をやっていたし、今生の実家じゃあ奴隷や使用人の代わりにやらされていた。今更である。

「箱入りのお嬢様だと思っていたのに、肝が座っているんだね……」

 彼女は気を取り直すように首を振って、若い女の子を手招きした。

「この子はリリア。あんたの先輩として仕事を教えるから」

「……リリア、です」

 大人しそうな少女だった。

 年齢は私より少し年下の、十四歳か十五歳くらいだろうか。

「荷物を置いたら、仕事に行ってきなさい」

 メイド長に促されて、私たちは部屋を出た。

 メイドの仕事はたくさんある。

 まずは掃除。

 広い軍団施設内を手分けしてきれいにする。

 掃除機などないので、ホウキと雑巾が頼りだ。全部手作業だね。

 兵士たちのベッドメイクもついでにやる。

 次に洗濯。

 汗と泥で汚れた兵士たちの衣類が、どっさり洗濯に出される。

 もちろん洗濯機はない。

 洗うのも干すのも全て手作業で、かなりの手間である。

 あとは料理。

 専属の料理人は一応いるのだが、数が少ないのでメイドたちが調理補助や配膳をする。

 ガスコンロがあるわけもなく、かまどに火を入れるのも一苦労だ。

 一つ一つの作業自体はそこまで難しくないものの、とにかく量が多い。

 メイドたちは手分けしてせっせと働いて、ようやく回っている状態だった。

「フェリシア。頑張っているな」

 仕事を始めて十日ほど経ったある日、黒髪の大柄な男性が声をかけてきた。年の頃は二十代前半くらいか。

 切れ長の灰色の目をした涼やかな顔立ちの人だった。

 彼は副軍団長の地位にいる人。つまりこの町で二番目に偉い人だ。

 副軍団長――ベネディクトは真面目な表情で続けた。

「貴族令嬢と聞いていたので、すぐに音を上げると思っていたが。メイドの仕事は汚れ仕事も多い。大変だろう」

「平気ですよ。リリアもきちんと教えてくれますから」

 笑顔で言うと、ベネディクトはわずかに眉を上げた。

 隣ではリリアが恥ずかしそうにしている。

 実際のところ、仕事はそれなりにきついが嫌になるほどではない。

 実家でいびられていた頃に比べれば、まともな食事にありつける上に周りの人たちも優しい。

 寝床もちゃんと藁が敷いてあって寝やすい。実家? 石の床にボロ毛布を敷いて寝ていましたが何か?

 食べ物も腐りかけの残飯とか平気で出されたからなあ。

 まあおかげで、私のお腹はハイパー丈夫になった。

 それに何より、やりがいがあるのがいい。

 軍団兵たちは当然ながら、ほとんどが男性。

 つまりここは、右を見ても左を見ても男ばかりの楽園なのだ!

 タイプもよりどりみどり、ベネディクトみたいな堅物からちょいヤンキー入ったみたいな人まで、BL妄想し放題ですよ!

 職場環境、もう最高!

 思わず歓喜のよだれが出そうになって、慌てて笑顔で取り繕った。

 ベネディクトは騙せたようだが、リリアは微妙な顔をしている。

「困り事があれば、遠慮なく言うように」

 ベネディクトはそう言って去っていった。

 私は「ああいう真面目そうな人は攻めかな、受けかな~。普段は不動の心を持っているのに好きな人から誘惑されて我慢できなくなっちゃう系かな? まあ相方次第、カプ次第だな!」とか考えていた。

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